2011年9月14日水曜日

舞台写真 by 井生明



根岸フミエ vocal

池田絢子 tabla

寺原太郎 bansri

シェン・フリンデル tabla

スティーブ・オダ sarod

タイ・バーホー tabla




アミット・ロイ sitar

ユザーン tabla




アミット・ロイ & 寺原太郎



カーテンコール ありがとうございました!

素敵な写真を撮ってくださった明君に感謝!
※皆様へ:これらの写真を使用する場合は、撮影:井生明 または photo by Akira Io と入れてくださいね。

サラスヴァティ後記  寺原太郎

先日9月11日、そうあの震災から6ヶ月目の日曜日に渋谷で行われたインド音楽コンサート「Indian Classics Tokyo 2011 サラスヴァティの祈り」について、記憶の鮮烈さが失われないうちに、憶えていることを記しておこうと思う。 

「Indian Classics Tokyo」 http://indianclassicstokyo.blogspot.com/ 



なにせハードな日々だった。金曜に鎌倉でライブ終わった後岐阜まで走り、土曜の夜はインド音楽オールナイトコンサート「サンギートメーラ」。明け方4時過ぎに会場を出発して再び渋谷へ。そうして迎えたこのコンサートだった。そのために10人乗りのワゴンと運転手を用意していたとはいえ、やはりこの連日不眠長距離移動はなかなかこたえる。 
しかし、そうも言ってはいられない。 
とにかくこれは、特別なコンサートなのだ。 
アミット・ロイとスティーブ・オダ、僕のもっとも敬愛する偉大な音楽家2人が揃うコンサート。 
大勢の命を奪いそして今も奪い続けているあの震災から6ヶ月、NYの貿易センタービル倒壊からちょうど10年目にあたる日のコンサート。 
僕がインドの笛を吹くと心に決めて門を叩いたあの夏の日から20年、僕のバンスリ人生における成人式でもあるコンサート。 
弱音を吐いている暇はなかった。 




 <第1部> 

1. Raga Jaunpuri : alap, khayal in maddhya tintal, tarana in drut tintal 
 根岸フミエ(vocal) 池田絢子(tabla) 

2. Raga Patdeep : alap, gat in vilambit tintal, drut ektal 
 寺原太郎(bansuri) Shen Flindell(tabla) 山口英里、寺原百合子(tanpura) 

Fumie  & Ayako     photo by Akira Iou
フミエちゃんの歌ったRaga Jaunpuriは朝のラーガ。 
「午後なんだからMadhuvanti歌えば?」と言ったのだが、取材で被災地にも行ったりしていた彼女はどうしてもこれが歌いたいと言う。カルナラサ(9つの感情のひとつ:悲しみ)の代表的なラーガ。迸るような激情。 
実際、肉親や大切な人の命を突然奪われた人に対して、かけられる言葉、納得のいく合理的な説明などあろう筈もない。ただただ何故!?と繰り返し思うだけ。しかしそんな時のためにも音楽はある。たとえこの世に神様がいなくても、音楽はそこにある。 
フミエちゃんの伸びやかな声が会場に響き渡る。 
タブラにうまく引き継がれていくのを確認して、僕は自分の準備に入る。 




 Taro & Shen   photo by Akira Iou
フミエちゃんが朝のラーガになったので、僕が代わりに午後のラーガをやることに。以前だったら得意なMadhuvantiをやるところだけど、地震以来どうもMadhu(蜜)な気分になれず、むしろしっくりくるのは1音違いのPatdeep。弱まりゆく光。そう、無理矢理元気を出す必要はない。疲れた時は疲れていればいい。きっとこれが今の自分に、そして自分を取り巻く状況に相応しいラーガなのだろう。 
Patdeepは今までどちらかというと苦手な、掴みにくいラーガだった。掴みにくいついでにdrut gatもいつものtintal(早16拍子)ではなく、ektal(早12拍子)にセット。せっかくしっかり練習できる機会なのだから苦手なことにチャレンジしてみようと思った。得意なことばかりやっていたのではいつまでも先へ進めない。これは競技かるたから学んだこと。攻めていればこそ守ることもできる。守りに入っていたら攻めることはできない。僕はやはり攻めがるたで行こう。これからも。そう思った。 




 <第2部> 

3. Raga Charukeshi : alap, gat in vilambit & drut tintal 
 Steve Oda(sarod) Ty Burhoe(tabla) 山口英里、北見智美(tanpura) 


4. Raga Chandrakaushiki : alap, gat in maddhya & drut tintal 
 Amit Roy(sitar) U-zhaan(tabla) 北見智美(tanpura) 

5. Bhairavi - Laaga Chunri Mein Daag 
 Amit Roy(sitar) U-zhaan(tabla) 寺原太郎(bansuri) 北見智美(tanpura) 

 

Steve &  Ty    photo by Akira Iou

Amit Roy & U-zhaan    photo by Akira Iou
スティーブジーとバッチューダ(Amit Roy)の演奏に関して、もはや言うべきことは何もない。 
その音の豊潤さ。圧倒的なラーガ感。官能と崇高さ。限りなく自由で自在。どう書いてみてもあの演奏を形容しきれるものではない。 
Ud. Ali Akbar Khan と Pt. Nikhil Banerjee、2人の偉大な音楽家の遺伝子が、たしかにここに引き継がれて存在している、そのことだけでもう充分だ。 
本物とはかくも巨大で圧倒的なものか。おそらく会場にいたすべての人がそう感じていたことと思う。 
この人たちと同じ場所にいることができて、本当に幸せだと思った。 
垣間見えたその道の果てしなさに絶望しつつ、同時に恍惚の極みに打ち震える。インド音楽はこんなにも凄い音楽で、僕の先生はこんなにも凄い人たちだった。あーまだまだだ。20年なんてほんの入り口だ。全然だ。もっともっと、ずっとずっと遠くまで道は続いている。命のある限りどこまでも行こう。半ば遠のきつつある意識の片隅で、再び誓いを新たにするのだった。 

2011年9月13日火曜日

Indian Classics Tokyo 2011 無事終了!ありがとうございました!!

Indian Classics Tokyo 2011 無事終了いたしました。
ご来場いただいた皆様、ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。

尊敬し、敬愛する素晴らしい演奏者たちのステージを、是非多くの方に届けたい。
インド音楽の素晴らしさを、一人でも多くの人に知ってもらいたい。
そんな思いからスタートした企画でした。

場所と出演者がほぼ決定し、企画を進める中で3月11日の震災が発生、
多くの命が奪われ、人々の暮らしが奪われてしまいました。
突然の大災害による大きな喪失感の中で、自分たちにいったい何が出来るのかと考え、問い続けました。

たくさんの思いが、うまくことばにならなくて。すみません。
聴きに来てくださった皆さんにとって、記憶に残るひとときとなったなら幸いです。